のみこむ ことば

言語聴覚士で2歳児の母。アイコン迷子。ことばの発達についてつらつらと

流産のこと

いつか忘れてしまうから感覚ごとことばにしておく

流産した

もうすぐ2週間が経つ

身体はだいぶ元通り

心もわりと落ち着いてきた

と、思っていた

 

昨日、とある発表にグッと涙がこみ上げる自分がいて

ああショックなんだ

まだまだ傷ついているんだと思い直す

 

落ち込むことがあったとき、ひとり籠ってイヤホンで爆音で音楽を聴いて

文字に起こすことで乗り越えてきた

家族が亡くなったときは泣きながら星野源の「知らない」を聞いて弔辞を書いた

 

長くなります

 

2020年1月11日

寒いけれど冬晴れのからりとした日

休日出勤に向かう

保育士試験の合格通知と妊娠検査薬の陽性が重なる

「2020年はクライマックスが最初にやってきます」と占いに書いてあったから、この日のことだと驚き、覚悟を決める。

希望している妊娠時期にはちょっと早かったし、何しろ仕事で無理をしている時期だった

12月初頭に引いた風邪が長引き、年末には発熱していたことが気にかかる

喉の痰がらみだけが残っている

 

長男の出産後、音楽を聴くことからすっかり遠ざかり、一時期あがいたがもう諦めこども曲を口ずさむ日々。こども曲もなかなか良いよね。

たまたま休日出勤だったから何気なくダウンロードした曲を聞く。


YUKI プリズム

 

涙の河を 泳ぎきって 旅は終わりを告げ

 

ぎゅっと涙がこみ上げた

なぜだかわからなかった

仕事と育児と長男と喜びと戸惑いと覚悟と

なんだかその全部だったと思う

 

2020年1月18日

かかりつけのクリニックを受診

・妊娠5週

「ちょっと胎胞が小さいかなあ」

 

2020年1月25日

家の近くのクリニックに初診

総合病院と悩んだが、自宅に近く入院中に長男が会いやすいかなと決める

無造作な内診

着替えながらカーテン越しに説明

 

・心拍確認

・血腫がある「無理をしないように」

自転車通勤について質問

・「絶対やめてくださいとは言えないが、何かあったときに自分を責めるかもしれません」

え、それって?

 

けして丁寧ではない診察に違和感を覚えながらも

心拍確認にホッとするのと

血腫への心配から違和感は忘れる

 

 

直属のボスには報告済み

血腫のことがあるので、他のメンバーにはもう少し安定してから伝えることにする

 

何となくお腹の右下がちくちく痛むことが多い

同じ場所

6週なのに全体が張っている

出血なし

 

自転車通勤を止める

仕事に送迎になかなか思うようにいかず焦る

健康に頼って無理をしてきたことを痛感

 

2020年2月3日

朝、何となく、本当に何となくナプキンを装着する

仕事

15時 出血 鮮血ではない。茶色め

16時 保育園に迎えに行く途中、後悔したくないのでクリニックに電話

   外のベンチ、風が冷たい、晴れてる

   「今日受診するほどじゃないけど、明日の朝来てください。よっぽど心配だったら今日来てもいいです」

   こういう時の言い方ってホント人によるね。

   

   迷ったが迷惑そうだったので明日の朝行くことにする 

 

2020年2月4日

「ちょっと出血しているけど大丈夫ですよ」と言われると信じて、仕事の調整をせず受診

内診台で足を開いているのに、カーテン越しに「カーテンを新しくする担当は誰だったか」の話が聞こえる

聞こえてますよ。寒いんですが。

やっと先生が到着

無言

小声でダブルチェックを要請している

ああ

わかったよ

「心拍が確認できません」

「間違いであってはいけないので、もう一人と確認しますね」

無言のエコー

無言で頷いて去るもう一人の先生

 

心肺停止の説明

子宮内容物除去術の説明

出血は始まっているので自然に出てくる可能性が高いが

仕事と育児があるので突然の大量出血になると大変かもしれないと

 

決められない

涙をこらえるのに必死で

しっかりした大人のフリをするのに必死で決められない

 

「どうしたらいいですかねぇ」

情けない声が出る

 

結局、自然に出てくるのを待ちつつ6日後に手術の予約をしておくことになった

急遽術前の心電図と採血

 

仕事に間に合わない

焦る

ぼーっとお会計を待っていたら、ロビーで手術時の入院部屋の話をされる

あの、他の妊婦さんが聞いていますけど大丈夫ですか

口には出せなかった

 

会計を終えて外に出る

一日病院にいた気分だがまだ空は青く晴れている

仕事には大遅刻になってしまった

本当の事情を言っていないので、メンバーに混乱と迷惑をかけてしまう結果に

「業務調整の見通しに無茶がある」烙印を押された(気がした)

心がべこっとへこむ

 

「赤ちゃん」のことを考えるとすぐに涙が出てきそうなので

何も考えないことにして目の前の仕事に集中する

いつもより良く笑う

 

2020年2月5日

普通に出勤する

今思うと判断力が低下していたとしか思えない

お腹の右下のチクチクは完全に消えた

代わりに全体が張っていて、少量の出血が続く

 

ボスに報告し、手術後まで仕事を休ませてもらうことにする

業務調整がつらい

このつらさから逃れるためだけに仕事を辞めたいといつも思う

長期休みになるので、メンバーにも事実を報告

「業務調整の見通しに無茶がある」烙印は取り消してもらえたかな

こころはへこんだまま

 

ああもうそのあとのことは覚えていない

日常生活を長男と送ることに必死

 

2020年2月6日

ハイテンション

散歩に出かける

今思えば判断力が本当に鈍っている

ユニクロで春物のスカートを色違いで買う

完全に衝動買い

午後になりお腹が痛くて休む

出血量が増えてきた

保育園のお迎えにいつもの倍の時間をかけて歩く

 

16時 痛みが強くなってきた

   生理痛のような鈍痛

18時 恥骨が痛い

   耐えられないほどではない

   腰も痛くなってきた

18時半どろっとこぶし大の血塊

   一部、大きめのビー玉大の血塊もある

   これかな?

   クリニックに電話

   ラップして冷蔵庫に入れ明日持ってくるように

   息子をお風呂に待たせているので急いで処理する

   

   お風呂に行こうと下着をおろした瞬間

 

   ぽろん

   

   ちょうど血塊も処理してきれいなそこに

   まんまるが現れた

   ああこれだ、絶対にそう

 

ひらいた手のひら あなたのかわりに 哀しみを抱いて 見果てぬ空の上 

 

   2月の寒い部屋、はだかで必死にまんまるを覗く

   あまりにまんまるで持ち上げて透かしてみる

   カーテンの隙間から淡いオレンジ色と水色のグラデーション

   夜に向かう空が見える

   まんまるも淡いオレンジ

   中にちょこんとつぶがある

   

   はだかだけど不思議と寒くない

   タッパーにティッシュを敷いて、その上にラップにくるんだまんまるを乗せる

   大事に運ぶからね

 

   恥骨の痛みは消えた

 

2020年2月7日

今日もよく晴れている

本当に冬か

初めてのお外なのでゆっくり歩いてクリニックに向かう

朝いちばんで受診

初診の時と同じ先生の無造作な内診

あのときの違和感はほんものか

「なかはきれいだね」

の一言で終わり。

何も言われないので、出てきた時のこと何も話せなかった。

病理検査もこちらから希望しないといけない雰囲気

電話で伝えたのにな

慌ただしく着替えながらなんとか病理検査をお願いする

まんまるだったこと言いたかったな

きれいなところにちょうど良いタイミングで出てきてくれたこと

 

同じ医療職として反面教師がこれほどいる病院ははじめてだ

気持ちに寄り添うことの難しさを考える

今考えなくてもいいけど

そういうことを考えてないと涙が出るから

一生忘れない診察になった

 

そのあと数日腹痛が続き

腹痛が治まったと思ったら胃痛で起き上がれなかった

出血は1週間で治まった

 

痰がらみも 消えた

 

 

 

「赤ちゃんが忘れ物をして一回帰った」とか

「今回は様子を見に来ただけ」とか

そんな慰めを記事で読んだがまったく響かなかった

知らない人のことばだからか

 

 

だっこしてほしかったんだね

悲しいときは悲しんでいい

がんばったね

だいすきなみんなの暖かい声がうれしかった

 

 

事実をただ受け止め

受け止めようと努力した

それだけはがんばった

 

 

私は、どこかで まちがえたかしら? 今はわからない 答えは空の上

 

まちがえたかしら?

いくらでも際限なく振り返ることができる

なにかあると人って空を見上げちゃうね

なんとなく

やっぱり空の上にいるのかなと思う

 

落ち着いたと思ったけどまっくろいものがこみ上げてぐるぐる

羨望、焦燥、祝福、葛藤、諦め、懐疑、過去の呪い

 

あなたは今も しかめ面で 幸せでしょうか

 

ごめんごめん

自分の理想が自分を苦しめている

隣の芝生は青いというけど、

隣の芝生はじぶんの高い理想の鏡映し

 

愛してくれる 優しい人 みつかるといいね

 

そうだね。

優しい人でいたいね。

もしよければまた来てね。

 

見たことのない場所へと まだ 歩いていけると 思ったんだ

 

花咲く丘まで 口笛吹いていこう 

喜びを抱いて 見果てぬ空の上

 

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